研究は、視覚障害生徒(盲学校生徒)の科学教育に関して、授業コミュニケーション研究と教材開発の二つの柱からなっている。 前者では、盲学校の理科授業における教師と生徒の言語コミュニケーションと教師の説明の特徴を明らかにすることを目的とし、先行研究の調査や盲学校、通常の学校におけるフィールドワーク調査を行い、盲学校における理科授業の特徴の分析を行った。盲学校の理科授業における教師と生徒の言語コミュニケーションの特徴として、準備・実験中に、教師による指示や評価多いこと、授業の導入やまとめでは、教師の発問や働きかけが多いこと、教師は主題となる問いを生徒に合わせ要素に分解し段階を踏んで発問していることの3点が明らかになった。また、盲学校の理科授業における教師の説明の特徴として、生徒に情報を正確に伝えるための説明、生徒に五感を活用させるための説明、生徒に全体像を把握させるための説明、対話を重視した説明の4点が明らかになった。 後者では、日本視覚障害理科教育研究会会報(「JASEB NEWS LETTER」毎年1回発行)の電子データ化を行った。このことにより、26年間の会報に掲載されている盲学校の観察や実験の実践記録、観察や実験の方法等について、検索が容易にできるようになった。また、児玉康一氏(愛知教育大助教授)の考案した低価格の感光器(視覚に障害のある児童生徒の理科実験用光センサー)を、同氏の許可を得て100個作成した。
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