本研究は、2つの柱からなっている。第一に、世界的に最も進んでいるといわれている視覚障害生徒に対する理科授業の実際を分析し、視覚障害生徒を対象にした固有で優れた教授・学習ストラテジー、教授・学習モデルを抽出・整理・系統化をはかるとともに、事例をデータベース化しその特質を探ることを目的とする。第二に、上記の教授・学習ストラテジーのなかから、健常者に対する理科授課に活用可能な教授・学習ストラテジーを抽出し、その有効性について実証的に検討することを目的とする。そのうち、平成20年度は、前年度に続き、第一の目的に対応して、筑波大学附属盲学校の理科授業、特に、実験活動を導入した物理授業を中心にビデオ収録し、授業内容とそれに対応した実験拒動及び授業全般における教師の教授活動と生徒の学習活動の両面及びその相互作用から視覚障害者を対象にした固有な優れた教授・学習ストラテジーを探る研究を進めた。第二に、学習指導要領の佳示に伴い、日本の理科学習が大きく転換し、視覚障害生徒にとって困難さを増す「表現力」の育成が、重要な改善の柱になった。そこでまず、理科教育一般として新学習指導要領の改善の基本に関する基礎的研究を進めた。その成果を関連雑誌に多数発表した。ただし、その成果を踏まえて、表現力の育成を視覚障害生徒への理科教育においてどのように推進するのか、新学習指導要領に対応した視費障害生徒のための理科教育(カリキュラム、教科書、教材、教具)をどう構築するかについては多くめ課題が残された。
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