研究概要 |
本研究の全体構想は、動物の身体移動運動を運動学的手法によって定量化,記載することにより,(1)動物の身体-運動-環境の相互関係を探り、(2)それを自然科学教育に役立てることである。今年度は、まず、野外に準ずる環境であり、多くの種に容易にアクセスできる動物園において、各種霊長類の身体運動の非侵襲的な計測法の開発を試みた。具体的には、愛知県犬山市の日本モンキーセンターにおいて、霊長類8種(シロテテナガザル、ワオキツネザル、アヌビスヒヒ、ジョフロイクモザル、マンドリル、フクロテナガザル、西ローランドゴリラ、ブラウンキツネザル)の身体運動をビデオで撮影し、得られた映像から身体運動の3次元的復元を行つた。その結果、野外環境においても身体運動の3次元的計測が可能であることが明らかになった,また、ケージ内で飼育されている5種(ジルバールトン、ボウシテナガザル、フサオマキザル、ケナガクモザル、アジルテナガザル)についても、ケージ内での自由な動きを撮影し、各種運動時の四肢の関節角度変化等が計測可能であることを確認した。この種の研究は、これまでは実験室内に限定されており、そのため対象の動物種が限られ、また、動物の動きも本来のものとは異なることが指摘されていたが、今回野外での計測が可能になったことにより、こうした研究の幅と可能性は大きく広がったことになる。 上記研究と平行して、テレメータによる非侵襲的な身体加速度解析法の開発も行った。これは動物に装着した無線式小型加速度計を用いて、得られた加速度波形から運動のモードを推定し、身体にかかる加速度等を推定する方法である。加速度計の購入、テレメータの調整、波形分析法の開発などを行った。その結果、模擬的な使用には耐え得ることを確認した。来年度は実除に動物に装着する予定である。
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