研究概要 |
近年,CSCL(Computer Supported Collaborative Learning)による学習が行われている.CSCL環境では,ネットワークを利用して学習を行うことで学習者が互いの意見や知識を共有しやすくなる.ネットワークという媒体を利用することで,多くの学習者の間で物理的あるいは時間的制約を超えてスムーズに行われる.こうして,学習者は他の学習者の意見や知識を参考に自らの理解を深めていくことができる.これまでCSCLの学習評価で主に取り扱われてきたのは,個々の学習者の議論の質であった(e.g.,Sandoval,& Millwood,2005).しかし,そうした個人の学習者の進展を促進するためには,グループ全体の理解との関連性を無視できない.さらに言えば,個々の学習者は他者の学習の進展をモニタしながら,自らの理解を高めていくことができないといけない.だが,この議論分析だけではグループ全体の理解を評価することは難しい.また教授者の視点から言えば,グループ全体としての知識発展を捉えることができれば,学習過程でその場の状況に応じ適切に協調学習の手助けをすることが可能になり,これまで以上に有効な環境を検討できる.こうした背景から,本研究ではグループ全体の理解を評価する方法論として複雑ネットワーク理論の応用を考えた. 同様のデータをこれまでの議論分析手法とネットワーク構造分析を施して比較したところ,議論の質の高低と,ネットワーク構造上での貢献度の高低で大きく4種類の分類をすることが可能であることがわかり,それらのタイプごとに教授的支援の方法を検討した.
|