研究概要 |
海洋有機物プールの維持機構解明へ向けて、海水中に存在する懸濁および溶存有機物からオリゴ糖鎖を分離・検出することを目的とする。具体的には,タンパク質・ペプチド・脂質、等の分子と共有結合した糖鎖、更に有機物-有機物相互作用による複合体形成に寄与する糖鎖を海洋有機物プールを構成する懸濁および溶存有機物から切り出し、検出する。 今年度は,懸濁有機物中の糖鎖の検出を重点的に行った.懸濁態有機物に対して,タンパク質の生成分離法としてもっとも一般的なドデシル硫酸ナトリウム-ポリアクリルアミドゲル電気泳動法を応用して,糖鎖-タンパク聞の結合の検出を試みた.懸濁態有機物中において糖鎖の多くは,短いペプチド鎖に結合し,分子種としては「プロテオグリカン」として存在する可能性が高いことが示唆される結果を得た.海洋生物に限らず,生物の多くは,タンパク質を中心に多様な糖鎖を保つ糖タンパク質を生産する.このことから,従来,懸濁態有機物を加水分解して糖およびアミノ酸が検出された場合,糖タンパク質が存在すると推察されてきた.しかし,本研究で得られた結果により,懸濁態有機物において,分子内に糖鎖とタンパク(ペプチド)を保つ分子種の多くは,プロテオグリカンである可能性が高いことから,海洋の有機物を中心とした物質循環過程を考える際には,糖鎖の多様性を新たに考慮する必要があることが明らかとなった.
|