フローサイトメトリーを用いた微粒子検出における重要な検討課題はノイズの削減である。今年度の研究では、海水中に分布する微粒子のモデルとしてウィルス粒子を考え、そのシグナルを明瞭に分離することを目標として、機器と分析方法の最適化を進めた。なお、ウィルス粒子は直径が20-50nmであり、本研究が目標とする微粒子の粒径とほぼ等しい範囲にある。ノイズは電気的ノイズ、シース溶液に由来するノイズ、光学的ノイズ、各種試薬に由来するノイズに分類することができる。これらのノイズに関する検討を進めた結果、電気的ノイズと光学的ノイズについては使用している機種(ベクトンディッキンソン・ファックスカリバー)としては最良に近い値にまで低減できていると判断された。シースや試薬に由来するノイズに関しては、試料の取り扱い方法や試薬の製造元や調整方法の検討を行った。これらの検討の結果、外洋域で採取された試料について、ウィルス粒子を2つないしは3つのクラスターに明瞭に分離することが可能になった。海洋の深層のような粒子濃度の低いサンプルにおいても良好な検出がなされており、サンプル採取や処理に際しての粒子の汚染は小さいものと判断された。以上の検討結果に基づき、中部太平洋において採集された海水試料の分析を進めた。その結果、ウィルス粒子とは側方散乱によって明瞭に区別される領域にシグナルが検出され、このシグナルの出現に海域特異性があることが示唆された。本研究の一部を、国際微生物生態学会(ウィーン)と日本海洋学会(東京)において発表した。
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