研究概要 |
対象としては北海道東部地方において塩淡境界層を有する海跡湖である網走湖、比較的汚染の少ない淡水湖である阿寒湖、屈斜路湖を選定し、十数カ所の観測地点における湖沼水および周辺の大気を採取し分析を行った。 分析の結果すべての観測ステーションで平衡濃度を上回る溶存メタン(以下、DMとする)濃度が検出された。大気との平衡DM濃度は淡水の水温を0〜20℃とした場合約4.7〜2.8[nmol/L](塩分濃度量S=0、大気中メタン濃度1.85ppm、1atmの時)であり、湖沼の表層PM濃度がこれより高いと湖沼から大気にメタンが放出されることとなる。開水期の表層のDM濃度は大気との平衡濃度の30〜1600倍と大きく上回っているため、メタンが大気へ放出されていると考えられるが、大気中メタン濃度そのものの異常は認められなかった。阿寒湖の表層DMは顕著な季節変化を示し、その要因の一つとして水温変化が関与している可能性が強く示唆された。 開水期平均マスフラックスを算出すると,fm=1.603[g-CH_4/year/m^2]となる。ただし、富栄養湖である網走湖のデータは除外した。この値は海洋平均の60倍に相当する。 平均フラックスを他の湖沼にも応用できると仮定して北海道の湖沼から大気に放出されるメタン量を推計した。その結果、北海道全域から1年(9ヶ月)間に放出されるメタン量は1.036[Gg-CH_4/year]となった。北海道の陸域における人為起源の年間メタン放出量(138[GE-CH_4/yr])の0.8%程度が湖沼のみから放出されていることになる。今後も継続して多くの湖沼を調査する必要がある。 以上の成果は国際会議において発表した(下記)。
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