対象としては北海道東部地方において塩淡境界層を有する海跡湖である網走湖を、北海道南部地方において比較的汚染の少ない淡水湖である支笏湖、洞爺湖を選定し、十数ヵ所の観測地点における湖沼水(沿岸及び沖合)周辺の大気を採取し分析を行った。網走湖においてはまた氷盤に固定された気泡群を採取してメタンガスを分離、同じ分析計で分析した。 分析の結果各観測ステーションで前年度に引き続き平衡濃度を上回る溶存メタン(以下、DMとする)濃度が検出された。網走湖ば各採水ステーションにおいて大気との平衡濃度の約30〜8000倍もの異常なDMが検出された。氷盤に固定された気泡群を分析した結果、高濃度のメタンが検出された。支笏湖及び洞爺湖は貧栄養湖のためDMが大気との平衡濃度の約30倍以下と低く目であった。大気中メタン濃度は全湖で異常は認められなかった。 北海道の平均的な湖沼から1年間(開水期9カ月間)に放出されるメタン量は0.54〔Gg-CH_4/yr〕となった。2006年度に調査した阿寒湖、屈斜路湖と今年度調査した支笏湖、洞爺湖のデータを平均した貧栄養湖の平均マスフラックスを算出すると、fm=0.879〔g-CH_4/yr/m^2〕となる。網走湖の平均マスフラックスはfm=13.2〔g-CH_4/yr/m^2〕となり、上で求めた平均的湖沼の約15倍となった。網走湖からの年間メタン放出量は0.43〔Gg-CH_4/yr〕で、これは北海道の湖沼全体から放出されるメタンの約44%(湖沼面積5%)に相当する。網走湖を含む北海道全湖沼からの年間メタン放出量は0.97(=0.54+0.43)〔Gg-CH_4/yr〕であり、北海道における人為起源の年間メタン放出量、約138〔Gg-CH_4/yr〕の約0.7%程度が湖沼から放出されている事が分かった。 以上の成果は日本機械学会北海道支部において発表した(下記)。
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