研究概要 |
1 宇宙飛行ストレスによって発現変化する遺伝子を確認するために、実際に宇宙飛行を行なったラットと地上対象ラットの肝よりRNAを抽出・RT-PCR法によりcDNAを合成し、real-time PCR法によりストレスで発現が変化することが知られているHSP70,HSP90,Cirbpの各遺伝子とp53,チトクロームP450(CYP)遺伝子(CYP1A〜CYP4Aの各ファミリー遺伝子を計11)の解析を行なった。その結果CYP4A1,HSP90,Cirbp,p53が宇宙飛行によって発現変化していることが分かった。次にこれらの遺伝子のたんぱく質レベルでの変化を確認するために、ラット肝をホモジナイズし得られたたんばく質を核画分、ミクロソーム画分、細胞質画分に分画した。分画したたんぱく質をSDS-PAGEにて分離しwestern blottingを行なった。その結果CYP4A1(ミクロソーム画分)とHSP90(核画分)のたんぱく質量の変化がreal-time PCRの結果と一致していることが確認できた。そこでホルマリン固定してある肝臓より薄切切片を作製し、HE染色と免疫染色を行ない上記2つの遺伝子の発現部位がどこであるか確認を行なった。その結果、HE染色像からは宇宙飛行により中心静脈から放射線状に認められるはずのシヌソイドの構造が乱れていることが分かり、肝臓の構造が変化していることが分かった。real-time PCR法とwestern blotting法では宇宙飛行ラット肝での発現が上昇していたCYP4A1は、免疫染色法では染色が不十分で最終的な結果が得られていない。一方HSP90は宇宙飛行ラット肝では地上対照群と比較して発現が低下していたが、免疫染色の結果、組織においても地上対照群の核が強く反応しておりreal-time PCR法、Western blotting法の結果と一致していた。以上より、宇宙飛行の特異的なストレスによりCYP4A1とHSP90がたんばく質レベルで変化していることが分かった。今後はCYP4A1の免疫染色法の結果をつめ、さらに宇宙飛行ストレスと同じストレスが細胞培養法により再現できないか、また放射線照射や加重重力により細胞培養法で発現変化した遺伝子が、宇宙飛行ラット肝においても変化しているか確かめる予定である。
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