社会活動で不要となった有害な化学物質の環境中への排出量や廃棄物等としての移動量を登録し、その情報を広く国民に公開するPRTR制度は、先進諸国で広く導入されている化学物質の新しい自主的な管理手法であり、排出汚染者による自主管理の促進が期待される画期的な環境管理システムである。しかし、対象となる化学物質が354物質(群)と多岐にわたり、それらの有害性や使用実態の解析と理解がなかなか進まず、登録情報の活用が遅れている。そこで本研究では、公害問題に端を発する環境問題のほとんどが、現在もなお、社会活動から発生する有害化学物質に起因している点に着目し、身近な発生源・排出源における有害物質を適切に管理するためのPRTR登録情報の解析と活用を目的として、化学物質の身近な生活圏レベルでの事業所からの排出量・移動量の解析と、各種の有害化学物質の業種別・用途別の排出量・移動量の解析を行った。 まず、国が公表する47都道府県別の排出量・移動量の推計方法の問題点と課題を整理し、元情報に乏しい市区町村別などの身近な生活圏レベルでの排出量や移動量のフローを論理推計する方法を検討した。また、身近な河川などの水環境への排出量をわかりやすく把握するために、地図情報システム等を活用した解析手法を検討した。また、国内に蓄積された過去5ケ年分のPRTRデータについて、年度間での事業所情報の一元化を行えるようにし、その経年変化を解析した。これらの成果を利用して、事業所の業種ごとの特徴や地域による自主管理の取り組みの有無や課題の抽出を開始した。
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