本研究は、重金属汚染土壌・水の汚染低減化に好酸性単細胞緑藻を利用するための基礎的研究を目的とし、以下のように研究を進めてきた。 好酸性単細胞緑藻の重金属(Cd)の無毒化に関連すると推測されるグルタチオン合成酵素γ-glutamylcysteine synthetase (GCS)の遺伝子を、Cd蓄積性の高いChlamydomonas acidophila DVB238(DVB238株)とCd蓄積性の高くないChlamydomonas acidophila KT-1 (KT-1株)より、部分的に決定した。DVB238株ではCdストレスによりGCS遺伝子の発現量の上昇がみられ、KT-1株と大きく差があったことから、DVB238株の高いCd蓄積能はGCS遺伝子の高い発現のためであるという事が示唆された。さらに、中性領域で生息できるCd蓄積性の高い藻株の作製のため、近縁種のChlamydomonas reinhardtiiを用い、GCS遺伝子を過剰発現させた形質転換体を作製した。GCS過剰発現体では、Cdに対するEC_50値がコントロールに比べ上昇し、Cd耐性の上昇が見られた。このことから、GCS遺伝子がCd耐性に寄与することが示唆された。また、DVB238株のCd応答蛋白質の同定のため、Cdの局在の解析を行った。その結果、膜画分にもCdが多く分布している事が明らかになった。今後、Cdの分布の高い画分について、Cd蓄積性応答蛋白質の探索を行う。 本研究により、DVB238株のCd蓄積や耐性の機構や応答タンパク質について明らかにし、将来的には藻類による水域の汚染除去や、藻類の浄化システムを高等植物へ導入し土壌の浄化を目指す。
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