研究概要 |
ノズル拡大部壁面での境界層剥離が少なく,滑らかに断熱膨張・加速する形状をもつ超音速ラバールノズルが,反応部で効果的にガス成分の過飽和状態を実現できることを数値解析で明らかにした上で矩形断面をもつラバールノズルを設計し,反応装置を試作した。反応装置の処理流量は60L/minとし,ノズル上流と超音速部でUVおよび軟X線照射用ポートを設けた。さらに,約1000℃のアルゴン+窒素ガス雰囲気中でチタン金属アルコキシド(TT1P)蒸気から種々の濃度の平均径10nmのアナタース型ナノTiO_2エアロゾルを安定的に生成できるナノ光触媒エアロゾル発生装置を製作した。 試験用ガスとして乾燥管で除湿した大気エアロゾルを使用し,大気エアロゾル中のガス・固体状の多環芳香族化合物(PAHs)15成分の分解特性を検討した。検討パラメータは,(1)紫外線(UV)強度,(2)UV照射位置,(3)TiO_2粒子濃度である。この結果,UV強度が3mW/cm^2を超えると急速に分解率が向上し,5mW/cm^2では,固体状と考えられる5-6ベンゼン環PAHsも約70%分解されること,UV照射位置をノズル喉部(音速)と超音速部とする場合で分解率に明確な差がないこと,大気エアロゾルよりも濃いTiO_2濃度では,TiO_2濃度の影響は少ないこと等を示した。 有害ガス成分への軟X線照射が分解特性に与える効果を常圧下で大気エアロゾルとバイオマス燃焼排ガスを用いて検証し,超音速条件との比較データを収集した。この結果,大気エアロゾル,バイオマス燃焼排ガス煙中の粒子状PAHs(固体あるいは吸着成分)は数十mS程度の照射時間でも約30%分解すること,微粒子ほど分解率が大きく,0.5μm以下では50〜60%分解すること,ガス状PAHs成分も同一条件下で30%分解するなど,軟X線照射による光触媒反応の効率化が期待される結果を得た。
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