四塩化珪素の亜鉛還元による太陽電池用高純度シリコンのプロセス開発を目的として本研究を実施した。従来装置の問題点を調べ、これを克服すべく、水平型反応塔装置と、改良版小型反応装置の2台を新規に構築した。これを用いて亜鉛溶融槽から亜鉛蒸気を反応塔に送り、四塩化ケイ素蒸気と反応させて亜鉛を酸化させ、高純度シリコンの還元生成条件を調べた。2006年度には20回ほどの合成実験を行ったが、不純物が多く、2004年に我々が初めて見出したナノ繊維状の形態をもつシリコンが生成する頻度は小さかった。また、生成条件の完全な特定には至らなかった。生成する繊維状ナノシリコンの評価を下高分解能電子顕微鏡観察、高精度粉末X線解析、化学分析等の手法により調べた。高純度シリコンの製造に現在用いられているシーメンス法あるいはモノシラン法は既に完成された技術であり、優れた点は多々あるが、一方で、製造コストが高く、また製造設備を極端に大型化・高度化せざるをえないという問題点をもつ。亜鉛還元法による太陽電池級の高純度シリコンの合成が成功すれば製造コストの大幅な削減を可能にする。現在、あたらしい反応装置を設計しており、次年度はこれを作成して繊維状ナノシリコンの生成条件を確定する予定である。2006年度の実験結果をまとめてセラミックス基盤工学研究センター年報2006に報告した。また、副生成物として出現する塩化亜鉛を直接電解するための試行についての論文を「ソーダと工業」誌に掲載した。
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