平成18年度においては、下記の3つのサブテーマを設定して研究を行った。 1)水銀耐性オペロンの細胞間伝達に注目して、その前提となる細胞内での遺伝子転移がどのような伝達媒体によってなされるかを明らかにする研究。 2)微生物細胞内における遺伝子転移に関与するトランスポゾンの塩基配列構造と細菌にみられるイントロンの自己スプライシング現象との関連性を明らかにする研究。 3)これまで当研究室で行ってきた水銀耐性オペロンの細菌間伝播の現象および伝播媒体となるベクターの解析結果に基づく自然界における遺伝子の水平伝播経路を推定する研究。 平成18年度に行った研究により、水銀耐性オペロンの多くはトランスポゾンにコードされており、トランスポゾンの転移能力によって広く自然界に伝播し拡散しているものと考えられた。また、それらのトランスポゾンの中には、自立的な転移能を有すると見なされる細菌性イントロンを持つものがあること明らかになった。このイントロンは真核生物で一般的なスプラオセオソームによってなされるスプライシングではなく、転写された後のmRNAが自己スプライシングすることによって分離することが知られた。また、この細菌性イントロンはその内部にiep遺伝子を有しているが、この遺伝子産物であるIEPタンパク質が自己スプライシングにおいてどのような機能を果たすかについて研究を行うために、IEPタンパク質の遺伝情報をコードするiep遺伝子を大腸菌において発現させるin vivoシステムを開発した。平成19年度の研究においては、これを大腸菌および酵母において発現させ、遺伝子伝播のベクターとしての可能性を確かめる予定にしている。
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