本研究ではモノマー設計および重合反応の検討によりMDMO-PPVの結晶性の制御を試み、その有機薄膜太陽電池への応用について検討した。MDMO-PPVは非等価なアルキル鎖を持つため、頭-尾結合が存在し、原理的にレジオレギュラリティーを有する。しかし、従来のGilch反応や2種類のモノマーを用いる通常のHorner-Emmons反応では、反応様式を制御してレジオレギュラーなポリマーを合成することは不可能であった。そこで、新規な非対称モノマーを用いてレジオレギュラーなMDMO-PPV(1)を合成することを試みた。対照として、2種類のモノマーを用いてレジオランダムなMDMO-PPV(2)を合成した。 ^1H-NMR測定により、ポリマー1が高い構造規則性を有することが確かめられた。1、2の薄膜をスピンコートにより作製し、UV-Visスペクトルを測定したところ、1は2に比べてピークが長波長にシフトし、さらに550〜600nm付近に吸収の肩が観察された。これは高い構造規則性により薄膜中での分子の結晶性が向上し、共役長の延長、およびポリマー鎖間の相互作用が強くなったためと考えられる。実際にX線回折によって、ポリマー1の結晶構造に由来するピークが観測され、固体中の高い結晶性が示された。また、薄膜中のホール移動度を測定したところ、ポリマー1は2に比べて一桁高い値(3.1x10^<-10>m^2V^<-1>s^<-1>)を示した。これらの結果から、ポリマーの構造規則性を制御することで固体中の構造規則性が向上し、その結果電気的性能が向上したことが示された。最後に、ポリマー1および2とPCBMの混合薄膜を用いて有機薄膜太陽電池を作成した。構造規則性の低いポリマー2では太陽光変換効率1.7%が得られたのに対し、規則性の高い1では3.0%に向上した。ポリマーの高い結晶性によりホール移動度が向上し、電荷輸送効率が改善したためと考えられる。
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