研究概要 |
本研究では、超分子的に集積した高スピン共役ポリラジカルをホストとして、有機ラジカルゲストの包接のON/OFFによりその磁化を制御することで、化学的に記録できる磁気メモリーの実現を狙っている。この目的を達成するために、以下の手順で実施している。「高スピン共役ポリラジカルホストを設計および合成する。」「有機ラジカルゲスト分子の最適化と包接条件の探索および得られた包接体の磁気的性質を探索する。」本年度は、以下の項目について明らかにした。 1.共役ポリラジカルホストの探索およびその超分子組織体構造の決定 安定ラジカル骨格のガルビノキシル骨格を有するポリ(1,3-フェニレンエチニレン)誘導体を合成した。酢酸エチル中で中空のフォルダマー構造を形成することを明らかにした。ガルビノキシル残基を有するフェニルアセチレンモノマーと、これに光学活性基を導入したモノマーとの共重合を経て片巻らせん構造に安定ラジカルが導入されたポリラジカルが合成できた。また、共重合組成により主鎖らせんの巻き方向を制御できることが明らかとなった。 2.アントラセン超分子の有機ラジカル包接およびその磁気的性質 ゲストフリーの9,10-ビス(3,5-ジヒドロキシフェニル)アントラセン(BPAnt)結晶を安定ニトロキシラジカル類のジクロロメタン溶液に浸漬させて超分子包接体をそれぞれ調製した。t-ブチルフェニルニトロキシドは濃縮状態では不安定であったが,BPAntに包接することで磁気測定が可能となった。包接比0.80のTANOLでは、一次元ハイゼンベルグモデルに従う弱い反強磁性であったのに対し、包接比1.47のTANOLでは,単純な一次元モデルあるいはキュリー-ワイス則では表せない磁気挙動を示しており、部分的に二量化したスピン結合を含む磁気構造を示唆した。一方、フェニルニトロニルニトロキシドはかさ高いため、効率よく包接されなかった。
|