本年度は、カンチレバーを用いた周波数検出型バイオセンサーにおいて、その最小検出質量を決定する周波数ノイズを定量的に予測するモデルを考案し、また実際にノイズ評価を行うことで、その妥当性を評価した。 従来、カンチレバーの共振周波数を検出する周波数検出型のバイオセンサーでは、その変位を検出する変位検出系のノイズによって周波数ノイズが決定されると考えられてきた。つまり、周波数変調(FM)通信と同様に取り扱われてきたのである。しかしながら、実際にバイオセンサーで用いられるカンチレバーの機械的Q値は非常に低く、しばしば10以下となるため、そうした取り扱いが妥当であるかについては疑問視されてきた。 我々は、変位検出系のノイズが自励発振ループ内で発生することを考慮に入れた、カンチレバーの周波数ノイズを定量的に予測するモデルを考案した。これにより、低Q値のカンチレバーの周波数ノイズも正確に予測することができるようになった。また、この妥当性を実際に液中で自励発振させたカンチレバーの周波数ノイズを計測することにより確認した。 一方、カンチレバーの変位検出系の低ノイズ化対策をさらに進め、10fm/√Hz以下を達成した。また、このように十分に変位検出系を用いた場合、カンチレバーの変位をセンサー出力とする変位検出型のバイオセンサーにおいて、本研究課題で提案した多重反射方式のカンチレバーセンサーは平行レーザ光を用いれば、感度の向上に大きく寄与できることを示すことができた。
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