棒状の金ナノ粒子(金ナノロッドと呼ぶ)は、球状の金ナノスフェアに比べて著しく強い増強電場を発現することや近赤外域に強いプラズモンバンドを示すなど、ナノ計測用材料として極めて有望である。本研究では、申請者らが開発した金ナノロッドの合成技術を格段に発展させるとともに、表面修飾などによってアレイ状に配列された構造体を創出し、優れたセンサ材料として有用性を実証することを目的とする。そのために、本年度は以下の点について研究を行った。 (1)金ナノロッドの合成 企業と連携し、さまざまな形状の金ナノロッドの合成を試みた。界面活性剤、酸素、銀イオンの濃度、光照射波長を変えて検討した結果、長さが銀イオン濃度で調整できることや、太い金ナノロッドの合成方法が開発できた。アスペクト比が約2から15までのものを合成することができた。表面に吸着している界面活性剤を生体リン脂質に一部変えることで分散性が向上した。またこのものを細胞に作用させても影響がなく、生体適合性もあることがわかった。 (2)コアーシェル構造体の合成 金ナノロッドの特性を保持するために、金ナノロッドをシリカ層で修飾することを試みた。先ず、金ナノロッドをポリアニオン、ポリカチオン、ポリビニルピロリドンの順で保護した。これにシリカ剤を加えて低温で反応させることにより、金ナノロッド(コア)の周囲にシリカ層(シェル)を形成させることに成功した。シリカ層の形成は電子顕微鏡で確認した。コアーシェル構造体の吸収スペクトルは溶媒の屈折率にわずかに応答した。シリカ層の厚みの制御について検討を進めているところである。
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