研究概要 |
本研究者は、「二本鎖DNAがカーボンナノチューブ(CNT)を水中に可溶化する」ことを世界に先駆けて発見し、研究を展開している。この水溶性DNA-CNTは、新しいバイオナノ材料として、化学、バイオ、医薬分野などさまざまな分野で大きく展開する可能性がある。本研究では、このまったく新しいナノバイオ素材の基礎特性・機能を明らかにすることを目的として研究を行い以下の成果を得た。 DNA水溶液で,単層CNT(SWNTs)を可溶化し、この溶液の近赤外領域でのSWNTsの光特性のpH依存性を調べた。我々は、DNAがSWNTsを可溶化することを既に報告した。この光特性を吸収スペクトル・近赤外フォトルミネッセンス測定により明らかにした。DNA/SWNTsは、pH6.4とpH7.0の間に近赤外フォトルミネッセンスの光特性に大きな変化を示し、(6.5)のカイラリティをもつSWNTs由来の発光のみが観測された。また溶液の近赤外吸収スペクトルは、pH5.8〜pH6.4の間でスペクトル構造に大きく変化が見られた。これは、SWNTs表面の酸化とホールドーピングによる半導体SWNTsのオージェ再結合が関与していると考えられる。この光学的特性は、DNA/SWNTsの医学・生化学分野への応用が期待される。 一方、PolyCおよびPolyGでSWNTsを可溶化し、いわゆる交互積層法により石英基板上にSWNTsの超薄膜形成が可能であることを見いだした。近赤外分光、Raman分光、電子顕微鏡などによりその構造を明らかにした。
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