これまで、Leucyl/phenylalanyl-tRNA protein transferase (LFPT)を利用して、もともとN末端がArgであるαカゼインに、N末端特異的蛍光修飾を施すことが可能であったが、すべての標的タンパク質に有効であるとは言いきれなかった。またタンパク質のN末端がArgである場合、そのタンパク質が大腸菌内で不安定であるという問題もある。そこで標的タンパク質N末端にいかに効率的にArgを提示させるか検討した。 標的タンパク質としてEGFPを選択し、そのN末端領域にSmall ubiquitin-related modifier (SUMO)を融合させた。SUMOはSUMOプロテアーゼによって認識され特異的部位で切断される。その性質を利用して切断部位の次の残基をArgとAspにしたEGFP(それぞれSUMO-R-EGFPとSUMO-D-EGFP)を大腸菌内で過剰発現させた。SUMO-R-EGFPはin vitroでSUMOプロテアーゼと作用させることで少量ながらもN末端に効率よくArgを提示させることができた。またSUMO-D-EGFPは大腸菌内でSUMOプロテアーゼと共発現させることでN末端がAspのEGFPを多量に調製することが可能であった。この場合、酵母のArginyl-tRNA protein transferase (N末端がAspまたはGluのタンパク質にArgを転移する酵素)を利用してEGFPのN末端にArgを提示させることができた。さらに両方法を用いて調製することができたN末端がArgのEGFPにLFPTを用いてアジドフェニルアラニンを転移させることが可能であり、その結果、EGFPにテトラメチルローダミン修飾を施すことが可能であった。残念ながら修飾効率が高く見積もっても30%なので、さらに修飾効率を高める必要がある。その後、DNAをN末端に結合させてDNAリンクタンパク質の物性を評価したい。
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