研究概要 |
本年度の課題は、Leucyl/Phenylalanyl-tRNA Protein Transferaseを利用するタンパク質のN末端修飾法の修飾効率がこれまで低かった点を改善し、実際に、タンパク質のN末端にDNAを結合させることであった。これまではN末端へのアジドフェニルアラニン導入効率をいかに高めるかについて条件検討を行ってきたが、アジド基選択的な修飾法として、これまで当研究室で利用してきたStaudinger-Bertozzi ligationよりも、Crick chemistryとして知られるアジド基とアセチレン誘導体のHuisgen 1,3-dipolar cycloadditionの方が修飾効率が高いことが判明したので、方針を転換してオリゴDNAの末端にアジド基を、タンパク質のN末端にはアセチレン誘導体であるエチニルフェニルアラニンを導入する系を構築することにした。まず当研究室で取得済みのフェニルアラニルtRNA合成酵素変異体(T415G)を用いてtRNAにエチニルフェニルアラニンが受容できるか検討したところ、T415Gにとってエチニルフェニルアラニンはアジドフェニルアラニンよりも1.5倍よい基質であることがわかった。次にαカゼインをモデルタンパク質として用いて、エチニルフェニルアラニンがN末端に導入され、さらに導入されたエチニル基がアジドフルオレセインとHuisgen 1,3-dipolar cycloadditionによって蛍光修飾されることを確かめた。残念ながら、オリゴDNAの末端に導入されたアミノ基をアジド基に変換する試薬の入手が遅れ、まだDNAをタンパク質のN末端に導入する実験を行えていない。今後、速やかにDNAリンクタンパク質の作製を試みたい。
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