非平衡・等温条件下における化学エネルギーから運動エネルギーへの変換の原理を解明することは、熱機関を介さない高効率のエネルギー変換の実現にもつながる重要な分野横断的研究課題である。これまでに、我々は非平衡・等温条件下でエネルギー変換する系の普遍的性質を理解するために有効なモデル系として、溶質マランゴニにより駆動され自発的に運動する液滴の系に注目し研究を進めてきた。これらの知見より、自発運動する液滴において、非平衡開放条件に見られる空間構造形成と自発運動の協同効果が重要であることが見出されており、この効果が非平衡等温条件下でのエネルギー変換の基本メカニズムになっていると推測している。そこで本萌芽研究では、界面活性剤水溶液中でのガラス基板上の油滴の自発的運動、水・アルコール系におけるアルコール液滴の自発的運動などという、溶質マランゴニ効果により駆動される比較的単純な現実空間でのモデル実験を通して、このような仮説を検証、深化させることを目的として実験を進めている。 このような目的のもと、研究を推進した結果、本年度は、次のような成果が得られた: ・油、水、界面活性剤系において、ゲルの生成とカップルして液滴が自発的に変形、運動するような系を見出した。 ・化学振動反応であるBZ反応の微小液滴の自発的運動に関して、光感受性触媒を用いることによって、光で制御することを可能とした。 ・アルコール液滴の自発的運動の系に関して、その移動距離のスケーリング解析を行った結果、大きな時間スケールでみたときにはBrown運動の特徴を示すことが明らかになった。
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