酸化還元状態が自律振動する化学反応(BZ反応)を触媒する金属錯体(Ru(bpy)_3)と温度感受性分子であるNIPAAmとを共重合した高分子やゲルを作製し、化学振動と体積相転移をカップルさせる手法(Lab-on-a polymer)を用いて研究を行なった。この手法により、化学振動に同期して自律振動を行なう高分子やゲルの作製が可能となった。 こうした高分子溶液では、粘度や濁度のようなマクロな物理量が、化学振動に同期して自律振動することがわかった。このような"系の化学反応を系の物理量変化に変換するメカニズム"を用いて、人工細胞系での細胞運動等の構築を目指す。 また、こうした自律振動性ゲルは、微細加工技術によって、マイクロメートルスケールのギャップを作製でき、ギャップの幾何学的形状とサイズ、高分子ゲルの組成によって、化学反応の伝達能力を調整することができることがわかった。このゲルパターンの組を1つの機能素子(化学ダイオード)として用いることが可能であることを示す研究を行なった。初年度は、こうしたセルの形状とサイズ、セル間のギャップを検討し、演算機能を実現するゲル素子の性質を解明することを目標に研究を行なった。 今後は、3個以上のセルを連携させ、更に複雑な演算の実現を目指すとともに、広域パターンを制御可能なセルの機能素子としての最小限の性質を解明していく。また、これらを使って(通常のコンピュータでは解きにくい)モデル問題を解くことを試みる。
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