研究概要 |
本研究では微小重力環境における火災安全性評価法の確立を目的に,重力の影響を小さくできる高温・低酸素流の流れる狭流路内における可燃性固体表面上の燃え拡がりと消炎機構について実験的に調査する.今年度は高温減酸素気流中における熱的に薄いろ紙表面上の燃え拡がりを調査するため,水平および垂直下方の燃え拡がりについて実験を行った.高温減酸素気流中の水平燃え拡がりでは,常温通常酸素濃度で見られていた下流位置での浮力による火炎の立ち上がりが見られず,浮力の作用が減少しているがわかった.垂直下方燃え拡がりでは,高温通常酸素濃度では火炎が上方に長く伸びていたが,高温減酸素気流中では火炎形状が丸くなり,微小重力環境におけるろ紙表面上の燃え拡がり火炎形状に近くなることがわかった.燃え拡がりに与える浮力の影響を評価するため,実験で得られた火炎長さ,火炎温度を用いてレイリー数を算出したところ,燃え拡がり限界酸素濃度での高温気流中における垂直下方燃え拡がりで,ほぼ臨界レイリー数に近い値となり,浮力の影響が極めて小さくなっていることがわかった. さらに,地上で微小重力を模擬した燃え拡がり火炎との対照データを得るために,落下塔を用いた微小重力環塊での燃え拡がり実験を行った.微小重力下では浮力の影響による下流での上方への火炎の伸びは見られない.酸素濃度を低下させると火炎長さは短くなり,酸素濃度を増加させると火炎長さも長くなる.S.Olsonのチャンバーを用いた静止気流中の実験では微小重力での燃え拡がり限界酸素濃度は21vol.%であったが,本実験では対向気流中での燃え拡がりのため,燃え拡がり限界酸素濃度はさらに低下し17.2vol.%となった.
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