自然災害発生時、地域住民と被災時に偶然居合わせた地理情報に乏しい旅行者や通行者(以降移動者)が、適切な避難手段・経路・行動の意思決定に必要なイメージ能力を向上させるための手法を検討することを目的に、静岡県熱海市及び神奈川県箱根町を対象に調査をおこなった。 調査対象地域および対象:静岡県熱海市、神奈川県箱根町の一般世帯および旅館。訪問配布、訪問回収。約200世帯に配布し、133票回収した。調査票配布の際には、調査票と地図を用意し、地図には災害に関する怪我体験やヒヤリ・ハット体験の箇所を記入してもらった。調査票配布および回収期間:平成18年12月。 調査の結果、全体としては、台風や集中豪雨による浸水被害・強風被害・土砂災害を心配する内容が多く、特に崖崩れなどの土砂災害を不安視する意見が多かったが、実際の避難体験は少なかった。特に熱海市は、海と山に囲まれているが、他の地域に比べて大きな災害の経験が比較的少なかったことが影響したようであった。しかしながら、熱海市の地形的特徴から考えられる災害と住民および旅館経営者が不安視している内容は一致していた。これは、体験情報提供者の居住年数が、比較的長かったことが要因と思われた。また、防災のために共有すべき体験として、移動中(避難中)に危ない思いをした体験が散見された(例:「国道13号線を車で通行中に前方2〜300mで崖崩れ発生。」)。 旅館経営者を対象とした調査では、宿泊客の避難経験の有無によって災害時の備蓄状況が異なることがわかった。また、旅行者の避難に関わる体験は若干数ではあるが、その存在が確認された。 これらの体験内容は熱海市の地図上にマッピングされた。その結果、地形特性とともに体験内容が提示されたため、災害時に気をつけるべきポイントが住民にとってイメージしやすいものとなった。
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