本研究では、自然災害発生時、地域住民や地理情報に乏しい旅行者や通行者が、適切な避難手段・経路・行動の意思決定に必要なイメージ能力を向上させるための手法を検討することを目的とした。その第一段階として、18年度及び19年度は、過去に災害の起こった地域を対象に一連の調査を行ない、様々な災害体験を収集した。具体的には、18年度は関東地方(静岡県熱海市・神奈川県箱根町)を対象とし、19年度は九州地方(大分県別府市及び湯布院)を対象とした。 調査対象地域および対象:大分県別府市、湯布院の一般世帯および旅館。郵送配布、郵送回収。約1000世帯に配布し、359票回収した。調査票配布の際には、調査票と地図を用意し、地図に災害およびヒヤリ・ハット体験の箇所を記入してもらった。調査票配布・回収期間:平成19年11月。 調査の結果、台風や集中豪雨による浸水被害・強風被害・土砂災害を心配する内容が多く、昨年度と同様の傾向が見られたが、特に別府市においては、強風に関する体験が多く寄せられていた。また、防災に有効と思われた体験として、事前に危険を予測して予定を変更するといった良い判断事例もあった(例:「敬老会を予定していたが、台風のために中止した。会場前の広場の薬師堂が石の台座を残して吹き飛んだことを考えると、敬老会を中止にして良かったと思う。」)。また、これらの体験内容は別府市と湯布院の地図上にマッピングされた。
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