昨年度までに大腸菌のペリプラズム結合タンパク質(PBP)の一種であるHisJを骨格にヒスチジンのFRETセンサーFLIPhisの開発に取り組み、ドッキング・シミュレーションに基づく特異性改変等の改良等を加えてきた。 本年度は、FLIPhisの基質特異性の更なる改良を目指して、各種変異体の作成を進めた。その結果、もっとも問題となるArgとの識別能が十分に高いセンサーを構築することが出来た。 一方で、Hisに対するKdが10μMオーダーのセンサーは、まだ取得できていない。 また全く新しい試みとして、HisJに円順列変異を加えることで、従来のFLIPhisとは反対にHisの結合によってFRET効率が増加するタイプのセンサーの開発を試み、これに成功した。更に円順列変異によりダイナミックレンジの拡大も達成された。但し、Argとの識別能力においては、未だ満足のゆくHisセンサーは得られていない。 ちなみにPBPに円順列変異を加えるアプローチは、HisJのみならずこれまでにテストした全てのPBPにおいてFRET変化の方向性の逆転を達成している。更に特筆すべきは、全くFRETの変化を起こさずにセンサーとして機能しなかったPBPにおいても、円順列変異の導入でFRETの変化を起こさせることに成功した点である。これらの結果は、円順列変異導入法は一般性の高いものであり、FRETセンサー化できるPBPの範囲を拡大という意味でも有効な手法であることを示唆している。 一方、これらのセンサーを用いた計測手法に関してはFCMによる計測に成功し、統計処理に耐え得る数のデータを迅速かつ高感度に取得できる目途が立った。
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