研究概要 |
一検体のDNAに対して多数のPCR反応を同時に行う"マルチプレックスPCR法"が確立されればその増幅パターン解析のみで増幅元DNAの同定が可能になる.この系の確立は,医療分野における新たな検査・診断法や環境・食品分野での簡便な検定試験法への応用など,産業界に大きなインパクトを与えうる.本研究課題では,DNA相同組換えを行う酵素群を利用してPCRの初期反応を制御することにより,高精度なマルチプレックスPCR法を確立することを目的としている. 平成18年度はRecA蛋白質のDNA対合反応の最適化を試みた.具体的には蛋白質濃度やプライマー濃度,さらには塩濃度,pH,コファクター濃度など多くの因子の最適化を行い,十数のPCR反応を同時に効率良く進行させることに成功した.さらに,RecA蛋白質を改変して一本鎖DNA結合を強めた結果,より高精度なマルチプレックスPCRに成功した.また,RecA蛋白質の対合反応を調節しているRecF, RecO, RecR, SSB蛋白質を調製し,それらの性質を調べた.その結果,SSBで覆われた一本鎖DNA領域でも,RecO, RecRが同時に存在すれば,RecA蛋白質が効率良く結合できることが明らかになった.SSBはDNAの二次構造を緩和する性質があるため,これらの蛋白質を併用することにより二次構造を形成しやすいDNA領域やプライマーに対するマルチプレックスPCRの実現の可能性が示された.
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