研究概要 |
本研究では、作物栽培における花成、果実や種子の形成に関わる生理活性物質を探索し、それらの物質を用いて果実や種子の増産を目指す。研究代表者らは、既にニホンナシから頂芽優勢を打破することによって生成される物質3,5-di-O-caffeoylquinic acidを見い出していることから、本物質をフィールドで用いることによりニホンナシの花芽誘導について調べる。一方、エンドウやシロイヌナズナを用いて頂芽優勢制御物質や花芽誘導物質を探索し、それらの物質を用いて果樹の花成機構を解明することを目的とする。 ニホンナシから見い出した化合物3,5-di-O-caffeoylquinic acidを、誘引処理を行っていない枝の葉や芽に塗布し、5ヶ月後に花芽形成している芽の数を調べた。その結果、誘引処理しているものよりは花芽形成率は低いが、未処理の枝と比較して約130%の花芽形成率であることを見い出した。一方、エンドウを用い、頂芽を切断したexplantと頂芽を残したexplantをそれぞれ寒天プレートに刺し、数時間後に寒天中に拡散している物質を抽出した。それぞれのexplantからの浸出物について、マルチチャンネル検出器を有する高速液体クロマトグラフィーを用いて分析し、両者で含有量に顕著な差の認められた成分を分取した。シロイヌナズナの花芽形成前後の植物体を抽出し、マルチチャンネル検出器を有する高速液体クロマトグラフィーを用いて分析し、両者で含有量に顕著な差の認められた成分を分取した。2DNMR, MSおよび化学誘導反応により構造解析を行ったところMGDGであることがわかった。本化合物を投与することによって約300%花芽形成率が増加することを見い出した。さらに関連化合物を探索した結果、5種の新規糖脂質を単離・構造決定することに成功し、本物質には顕著なクロロフィル分解促進作用を示すことを見い出した。
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