八丈島の海産発光生物調査を行った。その結果、発光性巻貝ヨコスジタマキビモドキが引き潮時のタイドプールに見つかることが判明した。とくに、海から特定の距離にある限られたタイドプールの石の下に群生していることがわかり、サンプルの安定した供給の手がかりが得られた。さらに、凍結サンプルを解凍するさいに発光が確認されたことから、発光に関与する物質は比較的安定であることが明らかとなった。 八丈島の陸棲発光生物の調査も同時に行った。その結果、発光性双翅目ニッポンヒラタキノコバエ幼虫を集めることに成功した。ただし、ある程度の割合で幼虫がヒメバチの仲間(Megastylus sp.)に寄生されていることも新たに判明した。凍結したニッポンヒラタキノコバエ幼虫サンプルを融解する際にイメージアナライザで発光が確認することができた。またこの発光は酸に対して比較的安定であるが、アルカリで不安定であることがわかった。 クローニング法を確立するために、ルシフェラーゼ遺伝子が既知であるヘイケボタルを用いた実験を行った。当初の計画ではゲンジボタルを使う予定であったが、材料の供給の問題で変更した。結果、ルシフェラーゼを発現するコロニーをニトロセルロースのメンブレンでリフティングし、それをルシフェリンがしみ込んだ濾紙の上に載せることで発光するコロニーを特定する方法を確立した。 発現クローニングのために、まず、より簡便なプラスミドベクターを用いる方法を最初に試みた。しかし、十分なコロニー数が得られなかった。おそらく、プラスミドベクターがより短いcDNAを効率よくライゲーションしたためと考えられる。今後クローニングしようとしている遺伝子は未知なので、その配列長は不明である。したがって、今後はより長いクローンを効率よく取り込むためにファージベクターの系を確立する必要がある。
|