18-19年度に収集した、小笠原で繁殖するクロアシアホウドリと亜南極クローゼ諸島で繁殖するワタリアホウドリのGPSトラッキングデータをつかってかれらの索餌行動を詳細に解析した。その結果は次の二つに要約される。 1. 地域限定的餌探索 : 小笠原聟島で、育雛中のクロアシアホウドリは聟島から2日以内のトリップで、最大400kmほどまで採食に出かけていた。1秒ごとにデータが取得できた3個体の軌跡のまがりぐあいをFirst Passage Timeをつかって分析した結果、その分散は、20km程度で大きく、これが地域限定探索の空間スケールであり、その範囲内で着水をしていることが多かった。またワタリアホウドリにおいても、同様な地域限定探索域がみとめられた。このように、両者において、10Kmスケールで採食行動を集中させる複数の場所が認められたが、今回のデータからは、こういった地域限定探索域が明瞭な海洋構造と結びついているかははっきりしなかった。 2. 飛翔行動 : クロアシアホウドリにおいて、一定方向に移動している部分では、細かく見ると100mスケールでジグザグしながら移動していることが多かった。急に方向転換したあとに低速(対地速度で秒速3-7m)部分があり、その後高速(秒速12-25m)部分があらわれた。その周期はウェーブレット解析によるとおよそ10-15秒だった。また、ワタリアホウドリでも同様の移動パタンが時々観察され、速度の変化周期も10-20秒だったが、高速部分(秒速25m)、低速部分(秒速5m)での速度は若干速かった。これらの速度は、ワタリアホウドリがダイナミックソアリングする場合の最適予測値(海面近くでの最高速度が秒速28m、頂点での最低速度が秒速10m、Sachs 2005)よりやや遅かったが、周期は予測値(ほぼ10秒)にちかかった。この部分ではダイナミックソアリングをしていると推定された。 これら2点について、招聘研究者を交え議論した。アホウドリ類は広範囲を移動しながら10kmスケールのホットスポットで索餌すること、GPSトラッキングは飛行や着水など詳細な行動解析にも使えることがわかった。
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