1.クローンのサンゴ片を使った野外実験 沖縄本島北部の瀬底島で、塊状ハマサンゴの骨格から切り出した板を設置し、半数には藻食性動物を排除する網をかけ、毎月板に付着した海藻の現存量と、クローンを識別して移植したウスエダミドリイシ群体片の大きさを計測する実験を実施した。予想に反して、海藻の現存量およびサンゴの成長量とも、網かけありとなしで差がなかった。この結果は、サンゴ礁の状態がより自然に近い西表島で実施した向様な実験で、網かけありでなしよりも、海藻の現存量が多く、サンゴの成長量が小さかったことと一致しなかった。このことは、沖縄本島では藻食性動物(主に魚類)の摂餌圧が低下していることを示しているのかもしれない。さらにサンゴの成長量は、瀬底島で西表島よりも大きかった。このことは、魚類の多寡が、サンゴの成長に影響を及ぼしていることを示唆する。これらのことから今後は、魚類の海藻への影響を介してのサンゴへの間接作用のみならず、サンゴへの直接的な影響も検討するべきであると考えられた。 2.クローンのサンゴ片を使った水槽実験 前年度に確立した、少量の海水をかけ流し、サンゴが生存・成長可能で、かつ環境条件を制御可能なサンゴの飼育実験系を用い、飼育水槽の水温を5段階に設定し、クローンを識別したハマサンゴ群体片を各水温条件下で飼育する実験を継続した。その結果、クローンによって成長量の大きい水温が、沖縄本島の冬季または夏季の水温と、異なることが明らかとなった。共生する褐虫藻の密度やクレード(遺伝的な違い)は、成長量の差とは関係していないことも明らかとなった。また温度を一定にし、光条件を変える実験も実施、現在結果を解析中である。
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