この研究では、質的記述的研究方法を用いて、日本の社会にみられる夫婦間暴力について、夫から妻への暴力という行動の背景を調査し、社会文化的にこの暴力行動を規定しているとおもわれる筋書きをみつけ、描写説明した。3つのエコロジカルモデルを統合して「日本文化における夫婦間暴力(IPV)のスクリプト」の概念枠組みを作成した。4つの主要概念(状況要因、夫婦行動、夫婦間コミュニケーション、IPV維持継続要因)と3つの側面(個人、対人、社会文化)に基づく面接ガイドにより、11名の女性IPV被害経験者に半構成的個人面接を実施した。 1.男性加害者の参加者がまだ得られていないが、女性被害者11名のデータを、夫婦間の関わりに焦点をあてて分析した。分析はイリノイ大学研究者との共同作業ですすめ、論文として完成させた。 内容分析により、IPV行動に影響している日本文化に共通する3つのビリーフ(信念):1)妻は夫に付随する、2)女性のする仕事(役割)は男性の仕事(役割)ほど価値がない3)IPVは妻が原因、が抽出された。 2.日本社会における夫婦間暴力に関して、女性の視点を反映した包括的な文化的スクリプトを提供した。また、以下が今後の効果的な夫婦間暴力介入プログラムの考案にむけての課題である。 ・男女平等の文化的ビリーフを養うためには、地域に根ざした学童年齢からの教育介入が必要である。 ・より包括的なスクリプトを描くには、将来の研究では、男性の視点や家族の視点を入れ込むことが必要である。 ・継続して男性加害者の視点を取り込めるように研究デザインを考慮し今後の研究課題としたい。
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