研究課題
「ベルクソンの教説はスピリチュアリスム的であるが、19世紀フランス・スピリチュアリスムには何も負うところがない」(ヴィエイヤール=バロン)とする定説とは逆に、本研究は、ラヴェッソンからラシュリエをへてベルクソンにいたる所謂「霊性論的実在論」を、デカルト的二元論の刷新という問題意識を共有する一連の思潮であると捉え、とくにその頂点に立つバルクソンがラシュリエの出した問題に答えるかたちで自らの哲学を作り上げていった、と考える。すなわち、帰納法の二重の原理である始動因と目的因とを追究したラシュリエが、前者を原因から結果を演繹する科学に、後者を絶えず新たに創出する藝術に関連づけながら、両者を統合する更に高い原理を求めて充分には果たせなかったのを引き受けて、ベルクソンは始動因と目的因との間に生命的な活動を認め、その非物質的なものの物質化の経験と論理とを自白、心身関係、創造、神といった問題について考究してゆくことになる。その経験と論理こそアナロジーである。このベルクソン的直観の論理は、認識論的には「類比の理」である〈自即他〉の「共感」として、存在論的には「還帰」即「発出」という垂直的な〈一即多〉の二重運動として、論理学的にはロゴスを包越してレンマへと展開すべき「超知性的」な論理として性格づけられるが、その形式論理を越えた論理は、実質的には意識の直接与件としての純粋な経験でもある。この霊的な直観に基づく美学は、西洋的な「存在の類比(アナロギア・エンティス)」と東洋的な「無の類比(アナロギア・ニヒリス)」との中間に位置する「形像の類比(アナロギア・イマギニス)」によって、〈存在の創造〉ではなくくイマージュの生成〉を解明する。そこに、近代の人間中心主義を越えて、自然や宇宙における人間の位置を見直させるような脱近代の美学の可能性がある。
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大阪教育大学紀要・第1部門 人文科学 57 (2)
ページ: 39-51
Au-dela de la philosophie de la vie. Les ateliers sur Les Deux sources de lamorale et de la religion de Bergson
ページ: 45-68
生の哲学の彼方-ベルクソン『道徳と宗教の二源泉』再読
ページ: 51-79
大阪教育大学・美術教育講座・芸術講座『美術科研究』 25
ページ: 85-110