本年度は、昨年度の体調不良による、繰り越しによる科研の最終年度であり、主に中世の文献学に関するデーターベースの構築とその分類に研究の重点をおいた。 研究の方法としては、これまで通り、インターネットを用いて、ロシア中世の文献の所在地、カタログ化の状況、画像史料の有無などを探っていった。これまで発見できなかったサイトも幾つか見つかった。とくに、ロシアの地方の大学、宗教共同体(古儀式派)などが発信している情報に貴重なものが見受けられたことが分かったことはひとつの成果だった。この様なサイトの収集と点検の作業は、科学研究費が終わっても、これからも定期的に行っていくべきものと考えている。 繰り越しによって9月に計画していたペテルブルグへの出張は、残念ながら体調不良が続いたため、医者と相談した結果やむなく取りやめることとした。その代わり、2009年2月に電機通信大学に出張に行き、同じロシア中世文献学を専攻する三浦准教授と面会して、文献学データーベースの構築に関する意見を交換した。データの収集には意義があることで意見が一致した。 主な研究成果としては、2008年6月に群像社から『ロシア文学鑑賞ハンドブック』を出版した。本書には1千を超えるロシア文学作品からの引用があるが、これらを引用するさいに、これまで把握したテキスト・データーベースを大いに活用した。データーベースなしには、大量で効果的なの引用は不可能であった。
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