初年度は今後研究を進めるに当たっての準備段階と位置づけ、以下のような基礎的作業を行った。 1.金元刻刊本の調査を、「中国古籍善本目録」「宋元版刻綜録」「中国版刻図録(金・元の部)」「静嘉堂秘籍志」などを参考にして文語、口語に関わらず広範囲に行い、原典影印版の収集を可能なものから進めた。「北京図書館古籍珍本叢刊」や「中華再造善本」「日本宮内庁書陵部蔵宋元版漢籍影印叢書」等所収のものを含め、貴重な資料を多く入手した。しかしまだ、残存刊本全体からみれば、わずかな数に止まっている。 2.元代の言語と文献を研究するための、基本図書を調査し、収集した。その内容は、元代史研究文献、書目題跋叢刊、伝記資料集成、遼金元石刻文献全集、「元雑劇」関連文献、「元朝秘史」関連の基本文献等、多種多数にわたっている。 3.「元人文集篇目分類索引」によって、文人文集の調査・整理を行い、平行して「元人文集珍本叢刊」「「元代筆記小説」(全四冊)を入手したのをはじめ、その他、多くの文集を収集し得た。元刊本が残っていないものについては、後世の善本の収集をめざしたが、まだ入手しえていないものが若干数残っている。 4.元刊「古本老乞大」と明清刊本「老乞大」の対照読解の継続。この作業は、本研究の方向を導き示す役割を担う。対照テキストを完成し、現在は原文の確認をしつつ再読し、訳注を付ける作業に入っている。 5.元代口語関連の辞書・索引類の調査収集を進め、三十点以上を常時参照できる状態に置いた。今後、これらの各工具書を最大限活用するためには、総合索引を作成する必要があると考え、その実現のためには、いかなる方法・手順が最善であるか、現在検討・試行中である。
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