研究課題 機能的脳イメージング機器である近赤外分光法(NIRS)を用いて、言語音産出のプロセスを検証した。 (1)子音・母音を発声する際の特徴を、脳内神経活動を測定する光イメージング技術により、見極める。 (2)発話成分が、どのぐらいの潜時で検出されるか。 (3)顔面筋電図[facial EMG]による計測結果との相関はどうか。 (4)習得段階による脳内活動の差異は見られるか。 主な実験結果 (1)日本で、はじめての試みであるが、サンプリング時間を25ミリ秒とした本実験で、安定したデータが収集できた。 (2)EROS(event-related optical signal)成分と呼ばれる、早い信号の発話成分は、100-175ミリ秒で検出できた。 (3)極めて少ない刺激数(5回)により、刺激への慣れや疲労を回避し、信頼性の高いデータが得られた。 (4)EROS信号は、神経細胞膜へのカルシウムイオンの流入を光イメージングが検出した信号と考えられる。 (5)習得段階[言語能力の高い群と、低い群]による、EROS信号の差異は、被験者数の少なさのため、明らかにならなかった。 本研究の意義 (1)世界で、速い光イメージング信号を検出できたのは、これまで、イリノイ大学とシンガポール大学のみであり、日本ではじめて発見された。(2)言語産出に関連する光成分は、25ミリ秒の精度で観察されたのは、意義深い。 (3)光イメージングにより、100-175ミリ秒の発話潜時が明らかになった。 なお、習得段階による光成分の差異を、多くの実験により詳細に検討する必要がある。
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