研究概要 |
アウトプットを行なった後でモデルを提示されるという一連のプロセスが日本人英語学習者の中間言語の発達にどのような影響を与えるのかを明らかにするために調査を行なった。調査には英語を専攻としていない大学生29が参加した。参加者は事前に英語力を判定するためのテストを実施し,その結果に基づいて3つのレベルに分けた。データ収集は下記のようなプロセスで実施した。 Stage 1.辞書を使用せずにタスク(誘導作文)を行なう(アウトプット1)。 Stage 2.モデルパッセージを配布する。 Stage 3.新しい発見等があった部分に下線を引き,どのような点に気づいたのかを記述する。 Stage 4.事前の予告無しに,Stage 1と同じタスクを翌週行なう(アウトプット2)。 言語形式今の気付きと調査参加者の言語能力を考慮に入れた上で,データ分析を行なった。分析の具体的内容は下記の通りである。なお,分析結果の信頼性を確保するために分析は3人の調査者が独立して分析を行なった。3人の分析結果が一致した部分のみをデータとして扱った。 1)言語形式への気付きが生じた部分のアウトプット1とアウトプット2を比較する。 2)どのような部分に高頻度で下線が引かれているのかを分析し,参加者の注意を引きやすい言語項目の特性について考察を加える。 3)学習者の言語能力を考慮に入れた上で,Stage 3における記述を質的に分析する。 今回行なった調査から,下記のような点が明らかになった。 1)アウトプット行なった後でモデルを提示されるというプロセスによって,上級レベルの学習者の方がより多くの語彙項目を取り込む。 2)参加者がインプット中の言語形式に続語的分析を加えると,言語項目の取り込みが促進されやすい。 3)アウトプットを行なった後でモデルを提示されるというプロセスは語がいかにして使われるのかについての知識の習得に貢献する。
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