研究概要 |
アウトプットを行った後でモデルインプットに触れるというプロセスによって日本人英語学習者の中間言語がどのように再構成されるのかを明らかにするための調査を行った。データ収集は下記のようなプロセスで実施した。調査には英語を専攻としていない大学生38名が参加した。調査前に参加者の英語力を判定するためのテストを行い,その結果に基づいて3つのレベルに分けた。 Stage1.MDによりそれぞれの文を2回聞きメモを取る。 Stage2.メモと和文を参考にして英作文を完成させる(アウトプット1)。 Stage3.モデルを受け取る。 Stage4.新しい発見があった部分に下線を引き,どのような点に気づいたのかを記述する。 Stage5.事前の予告無しに,和文のみを参考にしてStage2と同じ英作文を翌週行なう(アウトプット2)。 言語形式への気づきと調査参加者の言語能力を考慮に入れた上で,データ分析を行った。分析結果の信頼性を確保するために分析は3人の調査者が独立して行い,3人の分析結果が一致した部分のみをデータとして採用した。 分析の結果,(1)アウトプットの後でモデルに触れるというプロセスによって既存知識の多い学習者の方がより多くの文法形式を保持する,(2)学習者自身のアウトプットがモデルに含まれる目標言語形式に似ている場合は文法形式の保持が促進される,(3)モデルに含まれる言語形式に対する選択的注意は文法形式の保持を促進する,という3点が明らかになった。
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