本研究の最終年度にあたり、「洞(村)レベル」での調査を引き続き行い、かつ「道レベル(慶尚北道)」での教育状況を総合的に検討するために、韓国(ソウルや大邱など)で現地調査を実施した。具体的には各レベルにわたる、以下のような調査を行った。 1、慶尚北道の教育状況を通史的に考察するために必要な朝鮮総督府文書(『慶尚北道道勢一班』をはじめとする)を、ソウル大学校・高麗大学校図書館などで収集した。 2、従来の「洞レベル」での考察(慶尚北道達城郡月背面上仁洞)を更に進めるために、月谷歴史博物館(上仁洞所在)についての補足的な調査を実施した。また特に本年は、上仁洞出身者で、独立運動関連で裁判を受けた者のマイクロフィルム資料を「独立記念館」(天安市)で収集し分析することができた。かつ、その子孫へのインタヴュー調査を実施することにより、洞内の「私立徳山学校」を卒業者した者であることなどが判明した。 3、「面レベル」に関わる調査では、月背面に当時設立され、現在も運営されている大邱月背教会を直接訪問し、植民地期の資料を収集することができた。 4、「道レベル」での調査の一環として、慶尚北道金泉に1930年代に設立された、私立金泉高等普通学校について、植民地期の在学生及び卒業生に直接インタヴュー調査を行い、当時の教育状況についての証言が得られた。また、同校が私設学術講習会から学校へ、かつ正規の中等教育機関へと発展したケースであることが、収集した郷土資料などから判明した。
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