研究概要 |
平成19年度は、これまでにインド・パキスタンを中心として収集してきたイスラームの「聖遺物」に関する情報と文献・資史料の整理をおこなうと同時に、それらのデータベース化を試みた。また、新しい情報と文献・資史料の収集のために、関連図書を購入するとともに、国内他大学の附属図書館等で文献調査をおこなった。この過程で、インド・パキスタンで「預言者ムハンマドの子孫」であることを主張する「サイヤド」と呼ばれる人々が、イラン東部の都市、マシュハドのイマーム・リザーの墓廟と、そのマシュハド近郊の町、ニーシャープールにあるイマーム・リザーの足跡廟を重要な巡礼地とみなしていることが分かった。そのため、9月上旬にイランに出張し、マシュハドのイマーム廟とニーシャープールの足跡廟を参拝するとともに、巡礼者・観光客による参拝行為の観察をおこなった。こうした調査研究の成果は、「接触領域としての「聖遺物」信仰:南アジア・ムスリム社会の事例から」(『コンタクト・ゾーン』1,京都大学人文科学研究所人文学国際研究センター,pp.60‥71.)や、「聖者信仰と聖遺物:インド・イスラーム世界を中心に」(『世界史の研究』212,山川出版社,pp.1-14)のような専門家向けの学術的な雑誌だけでなく、「預言者ムハンマドの「遺品」信仰:南アジア・イスラーム世界の聖遺物」(赤堀雅幸編『民衆のイスラーム:スーフィー・聖者・精霊の世界』山川出版社)というかたちで一般読者を対象とした書物においても公表した。
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