研究課題
平成18年度は当初の研究計画にしたがい、国内ならびにイギリスにおける文献渉猟とイベリア半島における堅果類によるブタ飼養の予備的調査を行った。文献渉猟については、堅果類を用いたブタの飼養に関わる畜産学、歴史学、文化地理学の内容を中心とした基礎資料を得ることができた。これは、申請者がこれまで継続的に行ってきたブタ飼養の文化的、歴史的変遷に関わる研究に、堅果類を利用した飼養という新たな切り口での分析を加えていくことを可能にする重要な要素となる。イベリア半島における調査では、ポルトガルとスペインの両国におけるブタ飼養の実態を具体的に観察することができた。これらの調査では当初の予想にたがわず、堅果類の林の中における放牧による飼育形態を観察することができた。こうした放牧は、外見上は粗放的に見える部分があるものの、ブタが採餌する堅果類の種類を成長段階で変えたり、幼獣の生存率を確保するために、親子の個体を一定期間一緒に住まわせるなど、人間からの家畜に対する作用がさまざまな点について観察することができた。これらは、ブタの野生種であるイノシシの生態学的な特性に適応したものを多く見られることから、イノシシからブタへの家畜化の段階において、人間側がイノシシに対してとったドメスティケーションに関わる行動と少なからず関連した可能性が考えられる。こうした点に留意したうえで、次年度の調査、研究を遂行するうえでの調査プロトコールの作成を進めている段階である。
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月刊みんぽく 1月号
ページ: 3-4
ページ: 11
Dogs and people in social, working, economic or symbolic interaction (Lynn M. Snyder and Elizabeth A. Moore (eds.))
ページ: 77-84