最終年度には次の4つのことを実施した。 (1)文献調査:前年度に引き続き、フィリピンの一般紙、経済紙等、さらには政治・経済関連の文献を基に、今回の財政危機と改革の全体像を明らかにした。 (2)フィールドワーク:前年度に引き続き、有力政治家、経済テクノクラート、財界人、マスメディア関係者などに聴き取り調査を実施し、フィリピンの財政改革を阻むものが一体何であるかを可能な限り明らかにした。 (3)モデル(仮説)構築:今回の危機は、かつて一部シンクタンクが予測したような国家破綻といった深刻な事態には立ち至らず、フィリピン国家財政はある程度の「弾力性」を示した。もし、そうであるとするならば、フィリピン財政にはどのようなスタビライザーが内包されているかが明らかにされねばならない。それはおそらくフィリピン社会がもっているある種のガバナンス能力としか、とりあえずは表現できない。そうしたフィリピンの財政危機におけるガバナンス能力とは何か仮説的モデルを構築した。 (4)報告書の作成:以上の内容を盛り込んだペーパーを英文で書き上げた。これは今後数カ月かけてブラッシュアップし、神戸大学のジャーナルに公表する予定である。
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