研究概要 |
本研究は、ロシアの職業分類の近代化について考察することを目的としている。ロシアには国際職業分類(ISCO-88)に準拠した「全ロシア雇用分類表」と旧ソ連時代から利用されている「全ロシア労働者職業・職員職務・賃金表分類」が存在し,後者はいまだに深く各種申請や報告書類に利用されている。極度に細分化され,現実の経済には適応できていないように見えるこの職業分類の存続理由や具体的な運用について,これまで我が国において明示的な研究はなかった。そのため,本年度は,2つの調査を行うことで研究に必要な基礎資料を取得した。第一の調査は,職業分類が国勢調査において利用されることから,旧ソ連時代からの国際調査に利用された職業分類の特定とその職名数の調査を,一橋大学経済研究所に所蔵されている資料から行った。第二の調査は,旧ソ連時代から職業分類の策定に関わってきたモスクワの研究者ソローキナ氏などに直接面会し,職業分類の形成,「全ロシア労働者職業・職員職務・賃金表分類」の現在の運用の具体例および国際標準たるILOの国際職業分類(ISCO-88)との関係,現代の企業における労働組織と「全ロシア労働者職業・職員職務・賃金表分類」との関わり合い,公共職業安定機関における「全ロシア労働者職業・職員職務・賃金表分類」の利用について,インタビュー形式によって調査を行った。 こうした2つの調査により特に「全ロシア労働者職業・職員職務・賃金表分類」の形成と現在でもいまだに利用される理由を理解することができた。今回の調査をもとにして,現在研究成果となる論文の執筆を行っているが,来年度においては,より現在の労働組織との関わり合いについて研究を進めていく予定である。
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