本研究は、東アジア諸国の経済発展プロセスにおける企業家精神(Entreprene urship)の役割に焦点を当て、開発経済学、経営学、社会学、心理学などの学際的な視点からこれを包括的に整理、検証、体系化し、企業家精神が持つ開発経済学的意味づけを積極的に明らかにすることを目的としている。企業家精神を顕在化させ、これが生産的な分野で具現化していく諸要因とメカニズムの解明、ならびにその開発経済学的意義と課題を明らかにし、広く国際開発政策に資することを目指す。 研究2年目にあたる平成19年度は、引き続き理論文献を猟歩すると共に、現地調査を敢行し、実証面から研究の深化を図った。具体的には、平成19年12月に東南アジア地域(シンガポール、マレーシア、香港、中国)にて一週間程度の現地調査を行い、十数社の日系企業、地場企業へのインタビュー調査を進めた。調査は、日系多国籍企業の現地購買戦略、これに対する地場企業の企業家的反応、そしてこれらを制度的に触媒する政府の役割、この3つの変数が相互依存的に影響を与えていることが確認された。地場企業の行動に関して言えば、マレーシア、ペナンなどの産業集積の進んだ地域では、明らかに、旺盛なEntrepreneurial Orientadonが看取できたと言える。平成20年度には、産業集積の実積に相対的に乏しいフィリピンやインドネシアなどにも現地調査の範囲を拡大し、比較研究的な視点から、本研究の完成を目指していきたい。
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