研究概要 |
今年度は,第2年度にあたり,先ず,MITでMBAを取得しIITDにて客員教授を務めるバイオに特化したベンチャーキャピタリストP氏とのインタビューを行なった。特に,米国やマレーシアなどにもネットワークを持っているとのことであり,インド国内のニーズと米国の資金・スキルとの融合が進んでいる。第2に,バンガロールに立地しTグループによって買収されながらもグループ内で,Puneに拠点を持つ創薬部門と付加価値連鎖を築く目的で医薬開発に特化した部門であり,米国FDAからcGMPの認定を受けるまでの実力を持つA社医薬開発部門を訪問調査した。特に,主要な人物は,世界的製薬企業B社などの海外経験を有し,米国の品質水準を再現するのに大きな困難性を有してはいない。第3に,バンガロールに立地し,農業バイオの先駆的ベンチャーのM社の訪問調査を行なった。広大なインド市場内の異なる気候・ニーズに個別に対応し,害虫等を防ぐ新品種の開発を行なっている。第4に,バイオ系のテクニシャンのトレーニング,ビジネスモデル・プラントのコンサルタント,プラント建設受注を行なうBZ社を訪問調査した。米国にも拠点を持っているが,この事業領域の欠落を自ら発見して,倒産した製造企業から失業中の生産技術者を大量に採用し,投資家も経営に参画している。 今年度の調査では,バンガロールにおいてソフトウエアを中心としたITだけでなくバイオの医薬開発や農業バイオの事業でも地域内で先駆的且つ中堅の企業の存在を確認したことと,テクニシャントレーニング・コンサル・プラント受注という裾野の拡大を促進するインフラ事業の企業の存在をも確認できた。これは,当該クラスターのポテンシャルに加えて,着実な成長の基盤形成を予測させる事実である。中国の海亀組と同様に米国からの中核的人材の帰国が発展の大きな要因になっているが,インドでも人件費などの低コスト水準が競争優位性を低下させる中で,米欧同様に「クリエイティブ・クラス」のシフトが次期産業クラスターの形成を決める先行指標と考えることも可能である。 このような調査の成果は,刊行論文や学会発表等の中で活かされている。
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