今年度は、第一に、フランスでのフィールド・リサーチの成果からリヨンが、コミュニティにおいて、都市デザインと交通に関するプロジェクトを通し、どのようにソーシャル・キャピタルを構築し、経済・行政的な実績の増大や地域内の企業投資・移転を促そうと試みているかを示した。 第二に、わが国における、ネットワークモデルとして、ソーシャル・キャピタルを基盤としたコミュニティにおける要介護高齢者に向けたケアカンファレンスとして、「尾道方式」の事例をとりあげた。 まず、リヨンでは、交通プロジェクトに投資を行い、ソーシャル・キャピタルの成長を目指していることが明らかになっろ。特に、行政と企業のネットワークモデルとして、地元の民間広告会社とのパートナーシップによって展開している自転車レンタルサービスを事例にあげた。また、ソーシャル・キャピタルの要素である信頼度・ネットワークの指数は高く、ソーシャル・キャピタルの強度が高いことが示唆された。こうした事例は、日本へのベンチマークを提供することができるであろう。 一方、わが国の事例として、尾道方式(医師、保健師、看護師、理学療法士、介護福祉士、ホームヘルパー、民生委員など関係者が一堂に会したネットワーク)をとりあげ、当地では、強いソーシャル・キャピタルが存在したからこそ、うまく機能したのではないか、ということを指摘した。 なお、フィールド・リサーチの結果は、今現在も分析中であり、今後、研究成果を学術雑誌に投稿していく予定である。
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