研究概要 |
本研究の目的は,リスクとこれに対するリターンを考慮に入れたマネジメント・コントロールのあり方を探求するところにある。この研究を進めるに当たって,大きく分けて2つの方向から研究を進めた。一つは,RAPM(risk-adjusted performance measurement)と総称されるリスクを織り込んだ経営指標を用いた手法である。その二は,イールド・マネジメント(yield management)あるいはレベニュー・マネジメント(revenue management)と呼ばれるリスクを考慮に入れたうえで収益の最大化を図っていくマネジメント手法である。 RAPMは,金融機関や日本の大手総合商社で用いられている経営手法である。大手総合商社のマネジメント・コントロール・システムでは,1990年代末頃からRAPMを用いて,事業評価や業績評価を行っていた。事業評価の結果は,事業ポートフォリオの検討,組み換えに用いられている。RAPMに関しては,その利点と特質を改めて明らかにするとともに,これが総合商社で有効に機能した背景を探った。 レベニュー・マネジメントは,1980年代に航空業界で始まり,その後,ホテル業界,レンタカー業界,クルーズ・ライン業界等に波及していき,導入業界は広がりつつある。レベニュー・マネジメントでは,価格等を操作することによって収益の最大化を目指す。本年はホテル業界を中心として聞き取り調査を行った。聞き取り調査の結果,リスクに対処するに当たって階層構造が存在すること,投資のリスクをヘッジする方法として系列化(ブランド化)の進展があること,リスクの負担を誰が行うかなどの問題があることが明らかになった。 本年の研究成果は,二編の論文にまとめ,公表を行った。
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