研究概要 |
本研究の研究目的は,不確実性のもとでの企業経営に対するマネジメントツールに有用性を加える試みとして,リスクとこれに対するリターンを考慮に入れたマネジメント・コントロールめあり方を探求することであった。具体的には,(1)RAPM(risk-adjusted performance measurement),(2)企業や企業環境の違いによるリスクの質の違いとリターンとの関係を手掛かりとして,研究を進めていくこととしていた。 2年間の調査・研究によって,(1)異なった主体間でリスク・リターンをどうシェアするかの問題,(2)あるグループを構成することによってリスクを低めるという側面があること,(3)企業間の関係だけでなく,それら企業の共通の経営基盤となっているインフラストラクチャーに関するリスクをマネージする問題があること,(4)企業にとってのリスクの問題と経営陣にとってのリスクの問題が複雑に絡み合っていること,(5)成長の軌跡をどう描くかが企業のその後の成長と関係すること,などが分かってきた。 これらの発見事項を考慮に入れると,リスクとリターンを考慮に入れたマネジメント・コントロール・システムの構想は,以下の諸点をモデルに組み込んだビジネス・モデルを構築し,これに予測システム,予測とビジネス・モデルおよび環境のモニタリング・システム,対策モジュール,予測改訂システムによって構成すべきであること,リスク隔離の手段を講じておくべきことが指摘できる。ビジネス・モデルに組み込むべき要素は,対顧客,対仕入先,バリュー・チェイン,対競争企業,開発システム,インフラストラクチャーとユーティリティ,社会的環境,ファイナンス,リスクの分担関係などである。 なお,本研究の研究成果の一部は2008年秋刊行予定の著書として公表する予定で,現在執筆中である。
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