研究概要 |
本研究では,層化多段無作為抽出で実施された社会調査データに対し,事後的に地点の特徴に関する新たな情報を変数として加えることにより得られる「階層構造を持つ調査データ」に対する統計解析法の有効性を検討する。 本研究の研究方法は,1)利用可能な過去の社会調査データを整理し,2)各調査の実施時点に遡って入手可能な地点特性に関する情報を収集し1)と結合する,3)複数の分析法によって2)で作成した階層構造を持つデータを解析する,という三段階の手順を踏む。 平成18年度は,データA :統計数理研究所の「日本人の国民性調査」に関連して首都圏で行った2件の郵送調査(地点数は80〜100程度)と,データB :2005年社会階層と社会移動調査研究会による「2005年社会階層と社会移動調査」(日本全国,地点数約1000)のデータを素材とした分析準備作業を行った。後者の標本設計(代表者が担当)について,同時期に行われた韓国調査との対比とデザイン上の特徴をMaeda, Sato, and Nakao(2006)で発表した。 利用可能な地点特性のデータとして平成17年実施の国勢調査による人口統計的資料を入手したが,同資料の公表時期からの整理に時間を要し,世帯・人口に関する少数の変数について上記2)の作業を終え,3)の分析は十分にできていない。データA, Bの調査本体について予備分析を行ったが,どちらも目的変数の地点間分散の成分が小さく,データの階層構造を反映した二段抽出因子分析モデルなど,内部の変数だけの多水準分析が必ずしも有効ではない点が示唆された。またデータBは地点当りサンプルサイズが小さいため,地点の併合などの工夫が必要になることが予想された。今後3)の分析を進め,星野・前田(2006)のロジスティック回帰分析等,予測モデルに対する地点変数の有効性も検討する。
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